はじめに

昨今の健康ブームで、食べ物、特に食材そのものの安全性を気にする人が増えてきました。

街中にはオーガニック食品店が増え、スーパーやデパートにも有機野菜コーナーができたり、芸能人やモデルがオーガニック食材を使い、健康的でオシャレな生活をしている姿がメディアで流れたり。

とても体にいいイメージのこれらのオーガニック食材ですが、実際何をどう選んでよいのか分からなくなるのも事実です。

そこで今回は、話を野菜に限って、栽培法の違いやそれぞれの良いところなどを書いていきたいと思います。

1.慣行農法

有機野菜などについて述べる前に、まずは普通に私たちがスーパーなどで買う野菜の栽培法、慣行農法(かんこうのうほう)について書いてみましょう。

慣行農法とは、農水省やJAの指導に基づいて、肥料や農薬を使用して作る農法のことです。

「農薬って何?薬っていうくらいだから体にいいものでしょ?」

という方もいそうですが、農薬とはざっくり言って殺虫剤のことです。

それを、どばーっと畑に振りまいて、いわゆる害虫を殺しているわけです。

農家さんと、虫や雑草との戦いは本当に熾烈です。

ヨトウムシなどの害虫に一晩で白菜畑を全滅させられた、なんていう話もよく聞くのでまさに死活問題です。

そこで、それを防ぐために農薬を散布するのですが、先ほど述べたように農薬は殺虫剤なので取り扱い注意です。散布する際も吸い込まないようにガスマスクのような頑丈なマスクをして、皮膚につかないように防護服のようなものを着て散布します。

それを種まきから収穫まで数回から数十回散布するわけですから、自然と野菜は農薬まみれになります。

一応洗えば落ちるということになってはいますし、メーカー側の試験では人体への影響は見られない、ということになっています。

とはいえ、もともと石油から作られたものなので、水で洗っても全部は落ちないんじゃないかな、と私なんかは思ってしまいますが。

次は化成肥料(かせいひりょう)ですが、これは石油などから科学的に合成されて作られたもので、野菜の成長を促進させるために使われます。

これも本当にいろんな種類があり、野菜ごとに育ちやすいように作られているので、収量が増えます。毎年豊作か、凶作かで悩むことが減るので、農家さんにとってはとても役立ちます。

よくホームセンターで「○○用の肥料」とか書いてあるのはこれにあたります。

そういった石油系資材を使い、野菜をを育てている農法で作られた野菜をふだん私たちは食べているわけです。外食するときなどは、ここにさらに安価な外国産野菜などが使われたりするわけですね。

それでも慣行農法の野菜を買うことのメリットは多くあり、簡単に手に入ったり、比較的安価であったり、見た目がきれいであったり(味には関係ありませんが)と、普段皆さんが求めているのを満たすのはこれだと言えるでしょう。

2.有機栽培

続いては有機栽培について見てみましょう。

なんとなく体にいいというイメージのある有機栽培ですが、どんな風に作っているのかご存知の方はあまりいらっしゃらないかもしれませんね。

ざっくりいうと

・農薬を使わない

・化成肥料を使わない

・動物性堆肥、植物性堆肥などの肥料を使う

あたりが、有機栽培の特徴になります。

農薬や化成肥料については先ほどお話ししました。

ここでは「動物性堆肥(どうぶつせいたいひ)」「植物性堆肥(しょくぶつせいたいひ)について話していきましょう。

まず「堆肥」ですが、これはいわゆる肥料のことです。

その肥料を作る材料を動物性のものにするか、植物性のものにするかでまた変わってくるわけですね。

動物性堆肥の場合は家畜の糞を発酵させて完熟させてから使います。

糞なのでいわゆる「う○こ」なのですが、最初は確かに臭いますが発酵が進むに伴い匂いは分解されほぼ無臭になります。未熟なものを使うと臭いの他にもいろいろと問題が出てくるので、ここでしっかりと発酵させた堆肥を使うように農家さんは気を配っています。

植物性堆肥の場合はこれまたいろいろですが、一般的にはエン麦のような緑肥(りょくひ)と呼ばれる作物をまず作り収穫した後で、これも堆肥化するまで半年~長い場合は数年発酵させ、それを肥料として畑にまく、ということになります。

農家さんによっては緑肥をそのまま畑に鋤き込む人もいますが、そうすると発酵の過程で腐敗菌が発生して病気が出たりするので、手間はかかりませんがリスクは高いと言えます。

そうして手間と時間をかけて作った肥料を畑にまいて、それを栄養として野菜が育ちます。

農薬や除草剤も使わないので、畑には石油系資材は入り込まず、健康的な野菜が出来上がる、ということになってます。

有機栽培の野菜を買うメリットとしては、安全・安心である、慣行農法と比べてもそん色ない大きさの野菜が手に入る、もともと高値なので、天候不順の際なども価格が暴騰しない(=家計に与えるダメージが少ない)などがあるでしょう。

3.自然栽培について

次は自然栽培です。

有機栽培と混同されることも多く、また実際に自然栽培を標榜している農家さんでも実際は有機栽培だったりして、判別するのが難しいです。

さて、そんな自然栽培での栽培法ですが、これも簡単にまとめると

・無農薬

・無肥料

・自家採種

あたりを満たしていたらそれは完全に自然栽培だと言えます。

有機栽培との違いは、何といっても無肥料、ということに尽きると思います。

え?肥料無しで野菜ってできるの??と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、端的に言ってできます。

ただ、肥料を使用して栽培する方が収量が増える(=農家の収入が増える)ので、専業で農家をやっていて、それだけで生計を立てようとしている農家にとってはなかなか手を出しづらい領域でもあります。

とはいえ、昨今の健康ブームもあり、より自然に近い状態で作られた野菜のニーズが高いのも確かなので、やり方によっては生計を立てることも可能ですし、それで立派に生活されている農家さんも実際にいらっしゃいます。

もうひとつここで新しく出てきた「自家採種」というワードですが、これは、農家さんが野菜を育てて、自分でタネを採りそれを来年作付けする、というものです。

ここでも、え?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、現在の農家さんはほぼ100%自分でタネ採りをしません。タネは農協などで販売されているF1(エフワン)と呼ばれるタネを買って使っています。

これは複数の品種を掛け合わせたときにおこる雑種強勢の特徴を使い、味や大きさが優れた品種を人工的に生み出しているのですが、残念ながらF1のタネから育った野菜からタネを採って栽培しても雑種強勢の性質が失われるので、同じようなものはできなくなってしまいます。

また最近のF1種では雄性不稔といって、タネができないように改良(?)されているものもあります。

なので、必然的に農家さんは毎年新しいF1のタネを買い続けないといけないというわけです。

では、自家採種できる野菜とは何なのか、ということになりますが、これは固定種とか、在来種とか言われる種類の野菜があるのですが、それであればタネを採ることが可能なので自然栽培の農家さんたちは毎年大変な苦労をしながらタネ採りまで行っているわけです。

さて、そんな自然栽培の野菜を買うメリットですが、これはもう何といっても美味しいです。大きさは他の農法に比べると小さめなことが多いですが、その分エネルギーの密度が濃いように感じるので、大量に食べなくてもいいか、となります。結果として家計にも優しいかもしれません。

ただ、きちんとした自然農法の野菜を買うのはお店ではなかなか難しく、ネットなどで直接販売している農家さんを見つけて定期便などで買うのが今は一般的です。

4.さいごに

今回は野菜の栽培法の違いと、そのメリットなどについて簡単に説明してみました。

 

どの農法で作ったとしても、農家さんの大変な苦労の上に出来上がっているものであることに変わりはないですし、大事な野菜の命をいただいていることにも変わりはないので、美味しく大事に、楽しみながら日々の食事に取り入れていただければと思います。